アクアリウムの水質管理において、フィルターの存在はもはや必要不可欠であると言えます。様々なフィルターの中でも二酸化炭素の添加と相性が良く、しかもパワフルなろ過能力を持つために使用者が多いのが「外部フィルター」です。
この外部フィルターのろ過能力において凄まじいのが、サイフォンの原理を利用した「流量」。
しかしこの流量が強すぎると黒ヒゲゴケが発生してしまったり、生体にストレスがかかってしまったりと良くない影響も出てしまいます。
今回は「フィルターの適正な流量と水流のコントロール」についてお話したいと思います。
適正流量は環境により様々
私たちの管理する水槽は千差万別であるために、適正な流量というものを把握するのが難しいですよね。
それを補うのは「経験」に他ならないのですが、少しくらいはボーダーラインが欲しいところだと思います。
では初心者であればどのように最適な水流を見つければいいのでしょうか?
最適な水流は「環境を見る目にアリ」
最適な水流を考えるためにまずは少しだけ、例を出しますので一緒に考えてみましょう。
あなたの管理している水槽が60cm水槽だとします。
そこには10尾のネオンテトラ、20匹のヤマトヌマエビが住んでおり、有茎草が水槽内の30%程度を占めているとします。
では、この水槽にエーハイム2217を設置するのと、2213を設置するのはどちらが適しているでしょう?
いかがでしょうか。
情報がないのにどちらがいいのかを考えるのは難しかったと思います。
実のところ、その「一概には言えないよ〜!」というのが答えです。
水質を管理するためにフィルターがあるのは大前提ですが、そのフィルターがしっかりと水質維持に作用しているのかどうかを見極めるのが、フィルターの正しい扱い方です。
今例に挙げた環境は詳細に書かれているようで、どのような問題を抱えているのか全くわかりません。これでは、生体の状態もわかりませんよね。
環境を見る目を養うには「観察すること」
生体の状態をしっかりと見極めるには日々の「観察」が必要不可欠です。
今回は水流に焦点を当てて考えると、水流を受けた熱帯魚がどのような泳ぎ方をしているのか。
嫌がっていないか、水流があるポイントとないポイントどちらを好んでいるかなど、いろいろなところを観察することができます。
それに加えて、2213と2217を比較して考えるときにはフィルターによってしっかりと生物濾過ができているのか、また過剰なろ過になってしまっていないかを考えるとなお良いでしょう。
水流の強弱で変わること・わかること
水流はフィルターの基本的なスペック以外にも、いろいろな要因で変化します。
少し多いので箇条書きにしてみます。
- フィルターの目詰まり
- 水流を遮る流木や石、水草などのオブジェクト
- 水流の方向
- 排水パイプのアクセサリーの有無 などなど
いろいろな要因で変化してしまう水流ですが、やはり水槽内の環境はある程度一定であって欲しいものです。
ではこの変化しやすい水流が変わるとどうなるのか考えてみましょう。
水流が弱くなってしまった場合
水流が弱い場合は自然の中では池や湖に近い環境です。
ベタやアピストグラマなどが好む環境であり、弱い流れながらもしっかりとしたろ過を維持する必要があります。
なんらかの要因で水流が弱まってしまった際には、今までなかった止水域が増えて嫌気性細菌の発生が見られ、水質の悪化をもたらす可能性があります。
また、フィルター内のバクテリアが溶存酸素量の減少により不活性化する可能性もあります。これも水質の悪化につながってしまいます。
しかし悪いことだけではありません。
流れが穏やかになることで水草や生体へのストレスは減少します。泳ぎ疲れてしまうことがなくなるでしょう。
そして低床などに堆積したフンなどの汚れを舞い上がらせずに済むことも考えられますね。
水流が強くなってしまった場合
水流の強い環境といえば川の上流、澄んだ水が勢いよく流れる山間部の小川などでしょう。渓谷などの河川もかなり流れがありますね。
では急にそのように流れが急になってしまうとどうなってしまうでしょうか。
第一に熱帯魚などの生体へのストレス負荷がかなり高くなります。
ヤマトヌマエビやプレコの一部など急流を好む生体ももちろんいますが、熱帯魚全体で見ると少数派です。
次に水草や流木・石などのオブジェクト類の問題です。
それらをせっかく綺麗にレイアウトしたのに崩れてしまうかもしれません。いや、今崩れていないだけで帰った時には・・・なんてこともよくある話です。
なにせ、流木は特に水に浮きやすいですし、アク抜きがしっかりとされていなければソイルに埋めてあったとしても、浮いてしまうのは時間の問題でしょうからね。
レイアウトが崩れるということは、最悪の場合アクアリウムをやめることになってしまうかもしれない、非常に危険な状態です。
もしもレイアウトが崩れた拍子に、大きめの石がガラス面に激突・・・運が悪ければ床は水浸し、階下の方への損害を支払うハメになるかもしれません。
そんなことのないように、レイアウトは危険でないようにすること。また、水流を急に強くしないことも大切です。
最後に厄介な黒ひげゴケが発生しやすくなるのも水流が強いことでの大きなデメリットです。
水流を適切にすることで発生・成長を阻害できるため、黒ひげゴケを発見した場合は水質管理と水流を見直すべきかもしれません。
ちょうどいい水流のデザインを考える
弱すぎてもダメ、強すぎてもダメ。
しかもフィルターの大きさはわかりにくい。
これではどのフィルターを選んだらいいのかわからなくなってしまいますね。
私がオススメしているのは2217ですが、サイズによって様々になるので私個人の選ぶベストなサイズを別記事にまとめたいと思います。
【執筆中…しばしお待ちを】
では気に入ったフィルターが見つかったところで、ちょうどいい水流を「デザイン」していくのですが・・・
果たしてデザインするために必要なモノとはなんでしょうか。
水流のデザインは「引き算」で考える
水流をコントロールする時には引き算で考えていくとうまくいきます。デザインとは言うものの単純な水の動き方なので、もちろん強くすることはできません。
水流のデザインを引き算で考えるときに大切なことが4つあります。
- スタートとゴールを「曲線で」描いていく
- 水流をバラつかせない
- 大元を絞る時は全体を見て
- 反射をうまく使う
このままでは少し言葉が足りないので補足していきますね。
1:スタートとゴールは直線で考えない
フィルターの排水パイプ側をスタートとして、水槽内をまんべんなく水が流れて、吸水パイプに吸い込まれていく。
これが理想的な水流のデザインですね。
まずそのスタートとゴールを決めなくてはなりません。
水槽は四角いので、安易に考えつくのが以下の3つではないでしょうか。
- 左右に配置する
- 同じ位置に配置する
- 対角線で配置する
これに加えて排水パイプの向きも重要になってきます。
スタートとゴール、そして排水パイプの向きを使って水流をデザインするのがセオリーとなります。
では見出しの「直線では動かない」というところを説明します。
水流は排水パイプから出てまっすぐに進んでいきます。
そのまま何も遮るものがなかった場合、最終的にはガラス面にぶつかります。
ガラス面にぶつかった水流は方向によってですが、左右に分断されます。
この時の水流の動きは、水槽のガラス面に沿って円を描くように動いていきます。
円形に渦巻いていく水流の動きをうまく「引き算」していくことで、吸水パイプまでの距離をうまくコントロールします。
これが水流のデザイン基礎その1、「水流は曲線で動かす」という概念です。
2:「水流をバラつかせない」とは水の本筋をよく見ること
水流はフィルターの排水パイプから1本の太い線として放出されます。この勢いが水流の根源ですね。
この1本の線を出来る限りバラつかせないで給水パイプまで運んであげることが大事です。
例えば排水パイプの出口付近に背の高い水草があって、邪魔になっていたら・・?
もちろんその勢いは分散されてしまいます。そしてランダムにバラけた水流はコントロールを失い、水草の繁茂している箇所では止水域もできてしまうかもしれません。
できる限り水流をスムーズに通していくことで、うまく水流をコントロールできるようになるはずです。
水流を無駄なところで引き算しない、というのも適正な水流を生み出すために必要なことですね。
3:大元を絞る時のは最終的な水流を見越してから
スムーズに水流をデザインできたところで、その水流が適正な強さであるかを確認する必要があります。
水流が適正なのかどうかは生体の状態や水草がたなびく草姿を見て判断し、強すぎる場合には対策をとるべきです。
なお、弱すぎる場合はフィルター自体が適正ではない可能性がありますので、今後よく考え直す必要があります。もちろん前述の通り、遮るものなどがない場合です。
水の流れがうまく吸水パイプまで運べたことで導線は作れていますので、水流が強すぎる場合はアクセサリーを使用して、適切な強さにしていきましょう。
アクセサリーにはエーハイムナチュラルフローパイプやADAのリリィパイプなどがおすすめです。
見た目重視であればリリィパイプ、機能性で選ぶのであればエーハイムといった感覚で選ぶといいと思います。
4:反射をうまく使って「円形の渦を利用する」
水流は曲線で考えるといい、というのの発展系が「渦を利用する」というやり方です。
水槽内には流木や石などのオブジェクトがレイアウトのために設置してあるはずです。このオブジェクトをどうにか避けつつ、水流もデザインしたいですよね。
そのためにも「渦を利用すること」を覚えると、うまくデザインできるはずです。
考え方を軽く説明しますと、ガラス面に水流をわざと当てることで強制的に渦を発生させ、その先に吸水パイプがあるようにします。
ガラス面に当てることで、削り取るように「引き算」するのです。
水槽内を大きな渦と小さな渦、2つの渦を作ることでうまく水流をコントロールすることが可能になります。
この場合、左右にオブジェクトを配置した「凹型構図」にはうってつけの水流デザインと言えます。
逆に、中央にオブジェクトを配置した「凸型構図」の場合は、大きな1つの渦を水槽内全体にデザインすることで、うまく水流を作ることができます。
ちょうど、流れるプールのような感じだと思っていただけるとわかりやすいと思います。
このように渦を利用することで、あなたの水槽のレイアウトによって水流のデザインを考えていくことが可能です。
コメントを残す