水槽レイアウトに石を使っているならスネールとは徹底的に戦うべき

 

あなたがレイアウトをするときによく使っているのは流木ですか?石ですか?

もしも石を使っていてスネールを水槽内に発見したのなら、今すぐに戦う姿勢を取っておかないと後でとても後悔することになるかもしれません。

私自身スネールが大発生してしまいレイアウトを考えることもままならず、かなりモチベーションが下がってしまったことがあります。

あなたも私の水槽の時と同じように、たいへん危険な状態かもしれませんよ。

アクアリウムにおけるスネールとは

 

もしかしたらあなたも今日初めて聞いたワードかもしれません。なんといっても水槽の管理がうまくいっている人なら聞く必要のないワードですからね。

スネールとは水槽内に意図せずに発生した貝類のことです。主にソイルや水草から混入して発生します。

カタツムリのような見た目をしていることが多く、総称で「スネール」と呼ばれています。
その見た目と繁殖力の強さから鑑賞面への影響が強く、アクアリウムでは嫌われる傾向にあります。もちろん意図して入れているわけではありませんから、できれば消えて頂きたいのが本音ではないでしょうか。
このスネールにも様々な種類があり、実際に発生するものも厳密には種類が分からないことが多くあります。

 

スネールの鑑賞面での凶悪性

 

スネールは鑑賞面を著しく害しますが、存在だけではなくその繁殖についても同じことが言えます。

スネールの中でも代表的なものとして「サカマキガイ」と呼ばれるものがいます。
このサカマキガイは一般的なカタツムリと同様に性別というものが存在しません。雌雄同体といってカタツムリの仲間では男性器と女性器を持つ「両性具有」であるものも少なくないようです。

この両性具有は圧倒的な繁殖力を下支えするもので、カタツムリの仲間は互いに男性器・女性器を持っているために出会った個体の女性器にお互い精子を注入します。
結果、どちらも卵を産むことができる母体になるのです。

その母体となったカタツムリは数百もの卵を産みます。今回紹介したサカマキガイも同じように卵を水槽のガラス面や水草に産みつけてしまいます。
この卵がゼリー状で特徴的なのですが、これが鑑賞面を悪くするもう一つの要因です。

 

スネールの繁殖適応

 

スネールはあらゆる水質で繁殖します。

特に水の硬度が高い場合とpHが高い場合にはとてつもないスピードで繁殖します。この硬度とpHと関係するのが水槽をレイアウトしている「石」というわけです。
石をレイアウトに使うことで石の持つ成分が徐々に水槽内に溶け出し、硬度を上昇させてしまうことがあります。
この硬度を上昇させてしまうことこそがスネールを大発生させてしまう一因となっています。

今まで水質に問題がなかった水槽もスネールの発生によってバランスが崩れてしまうこともありますので、鑑賞面だけでなく水質管理にも大きく影響を与えることを肝に銘じておきましょう。

 

凶悪な繁殖をするカワコザラガイ

 

特に私が気をつけてほしいと思う貝が「カワコザラガイ」という種類です。

半透明でだいたい米粒程度の大きさにしかならないこの貝、「まぁいいか」という気持ちになることこそがコイツの凶悪さです。
だいたい発見時には水槽のガラス面についているのを見かけるはずです。しかしコイツがいるのは水槽のガラス面だけではなく、ソイルの隙間やフィルターの吸排水パイプの細かな段差などありとあらゆるところに存在します。

カワコザラガイはスネールの一般的な見た目とは違って平たくて半透明なためにプランクトンの類と勘違いすることもあるでしょう。
日中はほとんど動くことがなく、夜になると活発に動くようで日中とは別の場所にいることがあります。基本的に動いているところを見ることがないために、知識がなければ生物だと思えないかもしれません。

私はコイツは水槽内に発生するチャバネゴキブリだと思っております。

 

カワコザラガイを撃退するためにしたこと(失敗)

 

私の場合は例に違わず「これくらいなら気にならないだろう」という感覚で放置してしまいました。

その結果もちろん水槽内で大発生してしまい、どうにかしようとピンセットでつぶす日々が続きました。
ピンセットで潰してあげることでラミーノーズネオンテトラは食べてくれるのですが、ガラス面に強く張り付いたカワコザラガイは食べることができません。

物理的な除去は難しいと判断し、水質の改善を施そうとまずはpHを下げていく方向へシフトしました。

施策はピートモスを使ってpHを下げる方法。
換水の時にピート水を作って換水し、水槽内にもピートモスを不織布につめて入れてみたのですがいい結果は得られず・・・。

結果、私は放置して次のリセット時期まで待つことにしました。

 

水槽内の生命のサイクルを考えること

 

幸い水草などは食害にあうこともなくカワコザラガイがガラス面に大量にいること以外に問題はありませんでした。

ふと水槽を見るとなぜか小さなピンクラムズホーンがガラス面を這っていました。
「どこかの水草から混入したのだろう、カワコザラガイも大量にいることだしこれも放置だ。」としていると案の定ピンクラムズホーンも大繁殖。もうスネールの天国と化した私の水槽は完全に崩壊への一途をたどっていくはずでした。

しかし、ピンクラムズホーンが増えるにつれてカワコザラガイの数はだんだんと減っていきました。

同じようなものを食料としていたのでしょう、どちらかが優勢になるのは自然の摂理だったのかもしれません。
ここで私は「食料を断てばピンクラムズホーンもカワコザラガイも減っていくのではないか」と考えました。

その後給餌の量を減らし、2週間に1度生体の量に応じてかなり少ない量を与えました。
生体は見るからに痩せていきましたが、餌を与えればある程度の体格まで戻るので生体自体に問題はないようでした。その頃に稀に発生していた油膜さえも目減りしていったこともあり、餌を与える量のバランスが取れていなかったのだと気がつきました。

 

放置することにより減少したのはなぜか

 

私の今回の減少を徹底的に考察してみます。私の場合で言えば「たまたま」発生を抑制して大発生を乗り越えたようなものです。
しかし私がしたことを厳密に判断し実践すれば、カワコザラガイもかなりの数まで減らすことができるはずです。

 

施策1:低いpHを維持しようとしたこと

 

炭酸塩硬度(アルカリ度)は石のせいで引っ張られてしまうものの、ピートモスを用いて低いpHにしようとしたことはいい結果を生んだはずです。私は放置していた間、不織布に入れたピートモスも徐々に増やしたりしていました。

というのも最終的に増えたピンクラムズホーンでしたが、その後かなり減少傾向にあり今では水槽内では目立たないくらいの数になっています。このピンクラムズホーンの貝殻は白く穴があいていて、pHを低くしたことにより貝殻の成分が溶け出して減少したのではないかと思います。
ピンクラムズホーンの貝殻が溶け出すくらいですから、カワコザラガイの半透明な殻などすぐに溶けていってしまうもの。
これがカワコザラガイが先に絶滅した因果関係であると言えそうです。

 

施策2:給餌量を減らしたこと

 

エサの量を減らしたことがスネールのエサを水槽内から減らすことに繋がったために、より一層カワコザラガイを撃退できたのだと思います。

スネールとは言っても生態系の中ではしっかり硝化に結びつく貴重な存在です。
やはり硝化・分解につながる一定の層が爆発的に増えてしまうというのは、ひとえに「水槽内のバランスが保てていなかった」ことが一番の要因でしょう。そのアンバランスだった水槽にちょうどマッチしたスネールが混入したことによって増えてしまっていたのですね。

 

施策3:放置したこと

 

放置したこと、とは言いますが実際放置したことによって「生態系のバランスが整ったこと」が良い結果を生んだのでしょう。

フィルターを稼働させているビオトープのような環境になっていた私の水槽は、ミジンコなどの微生物が増えました。イトミミズのような存在も発見できたほど生命は多様化し、熱帯魚のフンの分解を担う存在が増えていったのだと思います。同じような分解を担っていたカワコザラガイの数が減少するのは自然の摂理であると言えます。

生態系のバランスを整えるにはゆったりとした水質の変化が求められます。
急激に換水を行ったからといってもスネールが大量発生してしまった環境下では逆効果になります。水道水に含まれるミネラル分がスネールの繁殖をさらに助長する結果になることもありえます。

換水の頻度を減らし、極端な環境にしていくこともいい結果を生んだのかもしれません。

それに加えて混入というカタチではありましたが、ピンクラムズホーンが一時的にバランスを崩したことも減少への大きな変化でした。
ピンクラムズホーンの見た目さえ気にならなければカワコザラガイの減少には効果的と言えます。

 

スネールは悪役ではない

 

ここまで書いておいて言うのもアレですが、スネールは悪いものではありません。
水槽内の生命多様化に関して言えば良いことであると捉えることもできます。多様な生命がいることが硝化のサイクルをスムーズに行うのは言うまでもありませんね。

しかし「大発生してしまう環境」というのはやはり問題があります。
硝化のサイクルを担っているとはいえ、一つの種類がそこまで多くなってしまうのは水槽内の環境として良くありません。

 

水槽内では弱肉強食の環境は再現できない

 

水槽内の閉鎖的な環境ではほとんどの場合、共食いや弱肉強食の食物連鎖の関係を作り上げることをしません。
なぜなら閉鎖的な環境であるがゆえに個体数が限られているため、食物連鎖の頂点にいる存在が何らかのカタチで消えたときに一気に生命のバランスが崩れてしまうからです。

では水槽内の環境はどのように作られているのでしょうか。
ここでは熱帯魚・エビ・貝・バクテリアの4種類を用いて説明します。

 

熱帯魚のフンを分解する流れ

 

熱帯魚はあなたから餌をもらいます。これが第一消費者であるとすると、そのフンを食べるのがエビや貝。エビや貝のフンを食べるのがバクテリアだとします。
この分解の過程で貝類だけが多くなってしまうパターンとして2つ考えられます。

1つは熱帯魚の出すフンの量が多いこと。2つ目はエビの消費する熱帯魚のフンが少ないこと。

消費の関係で言えば単純明快にスネールが増えた原因がわかります。ではそのスネールが増えてしまったことにより起こることはなんでしょう?

 

答えは貝のフンが多くなる、です。
もちろんそのフンを分解するのはバクテリアですが、一番末端の分解者であるバクテリアはこれ以上増えることができないくらいに水槽内に存在しています。
なにせフィルターで住環境を与えられているくらいですから、さらに増えることは難しいでしょう。

貝のフンを分解しきれなかったとすれば、そのフンは腐敗して水質を変えていきます。これが硝化のサイクルが崩れた状態、「水槽の崩壊」です。
水質が変われば水槽内の生物に影響を及ぼして今度はいたるところで消費と生産のバランスが崩れていきます。

 

あなたが戦う相手は「あなた」

 

食物連鎖の流れは最終的に水質の管理にまで行き着くのがわかったと思います。

スネールの混入がなかったとしてもあなたの水槽は「見えないアンバランスさ」の上で成り立っていたはずです。それがスネールの混入・大発生によって可視化して問題が浮き彫りになりました。
水質のバランスさえ取れていればスネールの繁殖の余地はなく、せめて少数にとどまっているはずです。たとえレイアウトに石を使っていたとしても、それを含めた水質を見抜く力を持っていれば大発生してしまう問題は起きようがありません。

スネールが繁殖する要因は水質の富栄養化と石による硬度によるアルカリ性よりのpHが原因だったと言えます。
それを加味した換水の実施と水質の管理、もちろんスネールを混入させない工夫も今後は必要になるはずです。

ときには生体と水草のバランスを改善することも硝酸消費のためにはいいかもしれませんね。

 

最後に

 

スネールも生き物で命です。その命をピンセットで安易に駆除してしまったことを今ではとても後悔しています。

もちろんその亡骸は他の生命になるのはわかっているのですが、そのピンセットでつぶす作業というのはなんとも心の痛むものでした。
果たしていち飼育者がそこまでの裁量があるのでしょうか。

「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね」とは手塚治虫の著書、「ブラックジャック」の本間丈太郎先生の言葉です。

私たちアクアリストは生命を自分の生活に取り入れて観察し、美しく生かそうと日々努力をしています。
そこへなんらかの形で誕生した命を私たちが「駆除」していいものでしょうか。私はその「駆除」はエゴイズムの塊であるような気がしてなりません。

 

私たちができるのは水槽内のバランスを保つこと。

美しい環境を、自然と私たちの美意識の混じり合いを創造すること。

これがアクアリストの美しい姿だと私は思います。

 

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